みずがめ座η流星群の2017年のダスト・トレイル情報
2017年5月、みずがめ座η流星群のダスト・トレイルが地球に接近傾向にあります。流星数増加への寄与は小さいかもしれませんが、情報として掲載します。
(公開:2017.4.10)
速報
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2017年のみずがめ座η流星群は、わずかに活発だったようですが、例年と較べて大幅に流星数が増加することはありませんでした。おおむね予想していた状況だったと考えられます。
- 参考リンク:
- 当方も、5月6日未明に観測しました。当方によるYoutube動画はこちら。
背景
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みずがめ座η流星群は、ハレー彗星(1P/Halley)を母天体とする流星群です。この母天体に由来する流星群は、昇交点側ではオリオン座流星群が、降交点側ではこのみずがめ座η流星群が観測されています。みずがめ座η流星群の極大は5月6日前後ですが、ピークは鋭くなく、数日間は同程度の活動が観測されます。
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みずがめ座η流星群は、通常の年ではZHR=50程度の出現が見込まれます。ただし、日本のような北半球中緯度では、観測条件が悪く、明け方の1〜2時間しか観測できません。放射点が低いため、実際に日本で観測できる流星数はとても少なく、1時間に10個(HR=10)も見られることはほとんどありません。
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みずがめ座η流星群については、2013年に複数のダスト・トレイルとの接近を当方が予報しました。このときには、実際に流星数が通常年の2〜3倍に増加しました(詳しくはこちら)。ただし、2013年以外でこのような増加が確認されたことはなく、まだ研究途中の段階です。
2017年のダスト・トレイルの分布
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ダスト・トレイルモデルによる計算を実施しました。これは母天体からモデルの流星体(砂粒)を放出させ、どのような分布をするかを調べ、地球軌道に近づくかどうかで流星数の増加を予報するものです。
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この結果、2017年には、-615年に母天体のハレー彗星から放出されたダストが形成するダスト・トレイルと地球が接近傾向にあることが判明しました。なお、ダスト・トレイルは折り重なってスウォーム状となっており、計算上はいくつもの部分が接近します。
予報データの概略
放出年 | 日時 | 太陽黄経 (2000.0) | 接近距離Δ (au) | 放出速度 (m/s) | fM | 放射点位置 | 地心速度 Vg(km/s) |
日付 | 日本時 | 赤経(゜) | 赤緯(゜) |
-615 | 05/05 | 14:20 | 44.678 | +0.0018 | -6.99 | 0.0058 | 337.23 | -1.18 | 65.85 |
-615 | 05/05 | 14:53 | 44.700 | +0.0021 | -7.03 | 0.0093 | 337.24 | -1.17 | 65.85 |
-615 | 05/05 | 14:55 | 44.702 | +0.0020 | -7.02 | 0.013 | 337.24 | -1.17 | 65.85 |
-615 | 05/05 | 20:06 | 44.910 | -0.0033 | -7.20 | 0.038 | 337.39 | -1.08 | 65.97 |
-615 | 05/05 | 21:24 | 44.963 | -0.0050 | -7.24 | 0.0073 | 337.43 | -1.05 | 66.01 |
-615 | 05/05 | 23:49 | 45.060 | -0.0036 | -6.82 | 0.0065 | 337.49 | -1.03 | 65.99 |
※ダスト・トレイルは、Δが0.005au以内、かつfM値が0.005以上のもののみ抜粋
◆ダスト・トレイルの分布図
考えられる状況
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ダスト・トレイルとの接近は、5月5日14時頃〜5月6日0時頃(日本時)です。もし流星数が増加するとした場合には、この時間帯、及びその前後になります。
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実際に増加が観測された2013年と比較すると、全体的に状況が悪く、出現数増加への寄与は微妙です。
■2013年との比較
- ダスト・トレイルの密度(fM値)が小さい
- 接近距離が遠い(全体的な傾向)
- 複数のダスト・トレイルではなく-615年放出ダスト・トレイル単独の接近である
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ダスト・トレイルによる極大は、鋭くはなくて、なだらかで継続的なピークとなることが予想されます。
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日本で地平線上に放射点が昇ってくるのは、1時頃です。また3時台には薄明が始まるため、実質観測できるのは1時半から3時半頃の2時間ほどです。5月6日未明は、ダスト・トレイルとの接近が過ぎた直後の時間帯です。
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もし増加した場合に、日本での観測が期待できるのは5月6日未明です。ただし、ダストの分布が広く増加する時間帯が広がった場合には、5日未明も要注意です。
その他の情報
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同様に、-615年放出のダスト・トレイルが今年接近するという計算は、ロシアのMikhail Maslovさんも計算されています。彼の計算では、極大は5月4日23時〜5月5日3時と予想されています。これは、当方の計算よりも半日〜1日近く早いことになり、興味深いです。
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Maslovさんの情報については、こちらの IMO Forum(英語サイト)をご覧ください。当方にも質問が来ましたので、回答してあります。なお、本ページ掲載の情報は、回答した当時よりもさらに計算を進めた結果を元に作成してあります。
みずがめ座η流星群の写真・動画
佐藤 幹哉(日本流星研究会/FAS府中天文同好会)
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