2013年のみずがめ座η流星群の突発出現について
2013年5月に「みずがめ座η流星群」の突発出現が観測されました。予報と実際の観測について簡略的にまとめました。
(公開:2013.6.29、一部修正:2013.7.9、一部追記:2013.7.10、一部追記:2013.9.17)
背景
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みずがめ座η流星群は、ハレー彗星(1P/Halley)を母天体とする流星群です。この母天体については、昇交点側ではオリオン座流星群が、降交点側ではこのみずがめ座η流星群が観測されます。みずがめ座η流星群の極大は5月6日前後ですが、ピークは鋭くなく、数日間は同程度の活動が観測されます。
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みずがめ座η流星群は、通常の年ではZHR=50程度の出現が見込まれます。ただし、北半球では観測条件が悪く、放射点が低い明け方の1〜2時間しか観測できません。このため実際に日本で観測できる流星数はもっと少なく、1時間に10個(HR=10)も見られることはほとんどありません。
予報
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ダスト・トレイルモデルによる計算を当方が実施しました。これは母天体からモデルの流星体(砂粒)を放出させ、どのような分布をするかを調べ、地球軌道に近づくかどうかで流星数の増加を予報するものです。
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この結果、2013年には複数のダスト・トレイルが地球軌道に接近し、地球と遭遇することが判明しました。しかしながら過去のみずがめ座η流星群について、ダスト・トレイルの接近により流星数の増加が観察された経験がないため、流星数増加具合は未知数でした。そこで、増加するかどうか注意深く観察してほしい旨を「日本流星研究会のメーリングリスト」「IMO(国際流星機構)のメーリングリスト」「SonotaCoネットワークのフォーラム」に投稿して広く呼びかけました(5月1日〜5月4日)。
予報データの概略
放出年 | 日時 | 太陽黄経 (2000.0) | 接近距離Δ (au) | 放出速度 (m/s) | fM | 放射点位置 | 地心速度 Vg(km/s) |
日付 | 日本時 | 赤経(゜) | 赤緯(゜) |
-910 | 5/06 | 14:45 | 45.682 | -0.0018 | -2.12 | 0.095 | 337.77 | -0.89 | 66.04 |
-910 | 5/06 | 15:16 | 45.703 | -0.0017 | -2.05 | 0.038 | 337.78 | -0.88 | 66.04 |
-910 | 5/06 | 15:27 | 45.710 | -0.0017 | -2.11 | 0.017 | 337.79 | -0.88 | 66.04 |
-1197 | 5/06 | 21:37 | 45.959 | +0.0021 | +3.44 | 0.013 | 337.89 | -0.80 | 65.99 |
-1197 | 5/07 | 06:19 | 46.310 | -0.0026 | +3.43 | 0.012 | 338.14 | -0.67 | 66.12 |
※ダスト・トレイルは、Δが0.003au以内に接近するもののみ抜粋
◆ダスト・トレイルの分布図
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5月6日14時頃〜5月7日7時頃にダスト・トレイルが接近し、この前後で流星数が増加する可能性が高い。
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極大は鋭くなく、なだらかで継続的となることが予想される。
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日本で期待できるのは5月7日未明。ただし6日の未明も要注意である。
観測結果
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みずがめ座η流星群は、実際に活発な出現が世界各地で観測されました。IMO(国際流星機構)による眼視観測の速報集計では、5月6日12時頃〜5月7日3時頃(日本時)に、ZHR=120〜140程度を記録しました。これは例年の2〜3倍の出現にあたります。
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国内の眼視観測では、5月7日未明にZHR=110の極大が観測されました。これは、例年の2倍程度です。
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当方らは、5月7日未明に眼視観測を実施し、3時〜3時30分に群流星数15個、HR=30、ZHR=129を記録しました。これは上記の国際集計・国内集計とほぼ一致しています(集計には、我々の観測結果も含まれています)。
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5月6日3時58分の-10等の火球や、5月7日3時47分の-6等の火球など、多くの火球が観測されました。
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国内のTV観測(日本流星研究会 上田さんの集計)では、おおむね過去最大となる出現が記録されました。過去の観測と比較して2〜4倍程度の出現規模でした。
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電波観測では、太陽黄経の45.7゜付近(5月6日15時頃)と46.2゜付近(5月7日3時頃)に極大が観測されています。
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以上より、さらなる精査は必要ですが、今回予報されたダスト・トレイルの接近による影響で、みずがめ座η流星群が活発化したことは間違いないと思われます。
その他の情報
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「月刊星ナビ誌」(2013年7月号)に、今回の活発な出現とその予報の状況について解説記事が掲載されました。
「News Watch みずがめ座η流星群、ノーマークの大出現」
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本件について、流星の国際学会「Meteoroids 2013」(ポーランド、8月)にて発表しました。
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本件について、日本天文学会秋季年会(東北大学、9月)にて発表しました。
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本件について、流星物理セミナー(東京、10月)にて発表しました。
撮影写真
動画(一部写真)
佐藤 幹哉(かわさき宙と緑の科学館/日本流星研究会/FAS府中天文同好会)
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