10月りゅう座流星群(ジャコビニ群)のダスト・トレイルの解析の結果、2019年10月8日夜に若干出現する可能性が見出されました。こちらの情報をまとめます。
2018年10月8日アイスランド・フッサフェルにて撮影した10月りゅう座流星群の流星とオーロラ
かつて、1933年(ヨーロッパなど)、1946年(アメリカなど)に大流星雨を記録した流星群です。近年に入っても、1985年、1998年(ともに日本など)、2011年(ヨーロッパなど)に流星雨と呼べる規模の出現が観測されています。
一方、1972年には日本で流星雨が見られると予想されましたが、実際には全く流れなかったこともあり、かつては予報の難しい流星群とされていました。近年はダスト・トレイルによる予報研究が進み、ある程度の精度で予報が可能になってきました。
流星群の母天体は、21P/Giacobini-Zinner(ジャコビニ・チンナー ※読み方は色々あります)彗星です。公転周期は約6.5年で、近日点が地球軌道付近、遠日点が木星軌道付近にあるいわゆる「木星族短周期彗星」に分類されます。
特に日本では「ジャコビニ流星群」として親しまれてきましたが、IAU(国際天文学連盟)の流星群の命名法に従い、現在の正式名称は「10月りゅう座流星群(October Draconids)」となっています。ただし、世界的に「Draconids(りゅう座流星群)」という様に「October(10月)」を省略する形が多く使用されているようです。
ダスト・トレイルを用いた解析上、便宜的ではありますが、当方はこの群の出現を以下の3つのタイプに分類しています。
今年、2019年の出現は、3番目のタイプにあたります。
ダスト・トレイルの解析の結果、1959年に放出したダストが形成するダスト・トレイルと比較的接近することが判明しました。1999年、2012年の状況と似ており、各年のダスト・トレイルの分布状況を図1に示します。
いずれの年も、1959年および(または)1966年のダスト・トレイルと接近しています。これらの年は母天体の近日点が太陽に若干近く、ダストの放出が活発であったことが推測される年に該当しています。
本年のダスト・トレイルの接近状況と、流星群のデータを表1にまとめます。
1959年に放出されたダストが形成するダスト・トレイルと、2019年10月8日深夜(日本時23時19分)に比較的接近することが判明しました。この時間帯は放射点が低く(東京で地平高度約19度)とあまり条件は良くありませんが、流星が見える可能性のある時間帯です。
1966年のダスト・トレイルは、深夜過ぎ(日本時10月9日0時25分)に接近しますが、距離はだいぶ遠く、流星出現に寄与するかどうかは微妙です。
ダストの母天体からの放出速度は、毎秒60mを越えていて、一般的な出現時の速度(毎秒20〜30m以内)よりも高速です。ただし母天体の近日点が太陽に若干近かった時代の放出のため、このような高速放出のダストもそれなりに存在し、流星が出現していると考えられます。
似た状況だった1999年は、全国的に悪天候だったのですが、一部地域で1時間あたりおよそ30個程度の出現が記録されています。この時は放射点が高い時間帯でしたので、この数と同じ規模の出現だとすると、今年は1時間あたり8〜13個程度の規模で流れる可能性があります(暗い空の場合、市街地では数分の1になります)。
寄与するダスト・トレイルが1本になることを考慮すると、1時間あたり4〜6個程度と半減します。
なお、2012年はやはり全国的に天候が悪く、(国内では)眼視的には観測できませんでしたが、電波を使用した観測により、中規模な出現が確認されています。
ピークの継続時間は、1999年、2012年ともあまり短くはなく、2019年の場合も、なだらかな継続時間が長めのピークが予想されます。
当日は月明かりの影響があります。流星の等級分布によっては、見られる流星数がさらに少なくなる可能性も高いです。
2019年10月8日深夜(23時台)を中心とした時間帯において、ダスト・トレイルの接近により10月りゅう座流星群が出現する可能性が見出されました。
出現数は、1時間に最大で10個程度(暗い空の場合)と少なめで、条件によってはさらに少なくなる可能性もあります。市街地では、1時間に1〜2個見られるかどうかだと考えられます。
ピークはなだらかで、継続時間がやや長めだと予想されます。多少早めの時間帯から、観測されることが望ましいです。
月明かりの影響があります。月が直接視界に入ると、見える流星数が減りますので、月と違う方向を見るなどの対応が必要です。
この流星群は、流星の速度が遅いのが特徴です。出現した場合には、非常にゆっくりと流れるため、判別しやすいです。
佐藤 幹哉(日本流星研究会)
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